LISA - Life Insurance Surveyor’s Association
みなさま益々ご活躍のことと存じます。さて、今月号では生命保険鑑定士基本教程の策定概要ついてお伝えします。
1、生命保険鑑定士の価値創造について
我が国は今後人口減が数十年単位で続く事が予想されています。保険業界もこの影響を受け顧客の絶対数減少が続くことになります。とりわけ働き手となる現役世代の減少が大きく、これは保障や資産形成ニーズがある世代が減少することを意味しています。一方で収入格差は広がりを見せ、中流所得水準を超える層では不確実さに備えつつも豊かな人生を求めています。したがって保障や資産形成そして資産運用、事業承継や相続などの関心が高く、情報への貪欲な傾向もみられます。この層は費用や資金負担力もあり潜在的な保険ニーズがあると考えられます。このような方々は生命保険に関しても信頼できそうな専門家から学び、検討したいと考える人が増えてきました。
生命保険鑑定士資格は、このような有望な顧客階層に対しお応えする専門資格としてのシグナルサインと位置づけています。この根幹をなすのがFD(フィデューシャリーデューティー:顧客本位の業務運営)の考えをもち顧客と接することです。FDの最前線の現場では、金融事業者(代理店)としての運営方針と所属する生命保険募集人の意識と行動が両輪として機能していなければなりません。高額商品になるほど顧客の購買元選択の意識が高まる傾向があります、言い換えると顧客に選ばれ信認される差別化要件としてFDを極めることが重要になっているのです。
生命保険鑑定では、FDの精神で意向推定からの意向把握のプロセスで顧客満足度を高め、顧客信認を得ていくことが肝要です。顧客に対し正しい知識を提供し、情報の非対称性を軽減解消することはFDの原点でもあります。生命保険鑑定士資格取得者はこのプロセスを丁寧に進めるための専門家としての適性と意思を持ったものでなければなりません。つまり生命保険鑑定士は、商品販売ありきのスタイルではなく真のFDを実践すること、そしてFDの実践による正しい保険営業を推進すること。生命保険鑑定士にはこのような崇高な理念を実践する使命があります。本会ではこのような理念に基づき「生命保険鑑定士基本教程」の策定を進めています。また、策定後の新規資格取得希望者にはこの適性試験合格を要件とする予定です。
2、「生命保険鑑定士基本教程」の策定について
生命保険鑑定士がFDの精神で顧客本位の業務を行うことは、顧客に対して高いブランド価値をもたらすと共に、鑑定士にとっても誰のために働くのか?何のために働くのか?これらがより鮮明になることと思います。顧客本位の保険営業の未来図を描く持続的ビジネスモデルとなって、プロフェッショナルとしてのプライドと自分らしい生き方の行動指針にもなることを期待するものです。
本会ではこのような姿勢で活躍できる生命保険鑑定士をFDマスター(FDを率先垂範する専門家)と位置づけます。基本教程は、①ルールベースとしての保険募集コンプライアンスの知識と確実な履行、②プリンシプルベースとしてのFDフィデューシャリーデューティーの主体的行為者としての行動、これらの水準を学び確認することを目的に、基本教程は次の要素で構成され、適性試験で履行力と行動力を確認します。
1章 募集コンプライアンス:①保険募集の基本的ルール、②ルールベースとプリンシプルベース、③改正保険業法の背景、④保険募集人に関する制限、⑤権限の明示、⑥情報提供義務、⑦意向把握義務、⑧意向確認義務、⑨保険募集人に対する体制整備義務、➉保険募集に関する禁止行為と罰則、
2章 鑑定倫理とフィデューシャリーデューティー:①生命保険鑑定士の理念、②会員規程倫理規則、③FDの意義と本質、④顧客本位の業務運営7原則、⑤顧客本位と顧客満足の違い、⑥顧客のために働く決意、⑦顧客が求めているFD、⑧率先垂範するFD実践者、⑨推進する上での課題、➉顧客との共通価値の創造、で構成します。これらの要素を持つ者が「顧客からの信認を得て差別化される」と考えています。
今秋以降の新規生命保険鑑定士資格取得希望者にはWEBによる教程学習と適性試験を実施する計画です。FD最前線で活躍するためにふさわしい資格として、①保険募集に関連するルールベースとしてのコンプライアンス理解の確認、②プリンシプルベースとして保険募集に必要な行動規範の理解と姿勢の確認、この2章構成による教程学習と適性試験合格が認定の要件になります。1級合格者にはFDマスター(専門家)としての証となるよう、新たな付加価値を追加するしくみも検討しています。なお、すでに1級資格をお持ちの方はこの試験の合否判定を免除する予定です。これらは生命保険鑑定士会報(次号)にて詳細をお伝えすることとします、今後の展開にご期待ください。
理事長記