LISA - Life Insurance Surveyor’s Association

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レポート2022年02月01日

事例レポート(法人編)


2022年2月

生命保険鑑定士会事例レポート(法人編)

 みなさまいつも大変お世話になっております。今年も活動が制約される状況が続きたいへんご苦労されていることと思います。さて、今号では法人に向けた保障鑑定についてお伝えします。

(1)企業経営におけるリスクマネジメント
 企業の中に潜むさまざまなリスクを把握しておくことは経営者にとって欠かせないことです。売り上げ、納期、品質、資金繰りといった日常業務に忙殺されリスクマネジメント思考が後回しになっている企業経営者も少なくありません。しかしながら企業経営そのものがリスクマネジメントの連続であり、意識せずとも様々なリスクを回避、低減するような行動をとられていることと思います。
 ここで生命保険鑑定士の役割としては、さまざまなリスクの中に潜んでいる「純粋リスク」を経営者に気づいていただく事であると考えます。この「純粋リスク」とは経常的な努力では回避できなくなるような万一のリスクで、社長の死亡や就業不能状態などが発生した場合会社、家族、社員、取引先などへ緊急かつ重要な影響を及ぼすものです。経営の要である経営者の純粋リスクについては、①まず問いかけて直感的な考えを聴く事、②次に論理的に診断して提示する事、③最後に感情に訴え意思決定いただく事、生命保険鑑定士はこのプロセスで保障鑑定を進めます。鑑定を終えるまでの段階では保険商品の紹介やプランニングは行いません。問いかけに対する社長の直感を尊重しつつも、論理的な視点からも気づいていただく事が大切なプロセスかと思います。財務会計データなどから機械的に計算された保障額をそのまま提示するような方法では、社長の納得感は得られないのではないでしょうか。

(2)純粋リスクとその項目
 一般的に企業の純粋リスクとは、保険に肩代わりさせておく方が合理的です。起きるか起きないかはわからないが起きた時、避けることが困難で影響が大きいものが純粋リスクに該当します。保障鑑定を始めるにあたっては、企業内在するこのようなリスクを項目別に示し経営者の直感的な危機感を率直に聞いてみることが効果的です。
 経営者に万一のことが起きてしまった場合に影響を受けるリスク項目は、次のようなものです。

①(運転資金)当座の運転資金は準備されているか? 「はい」「いいえ」
②(借入金)法人と個人で返済を求められる借入金はあるか? 「はい」「いいえ」
③(従業員給与)従業員を確保しておくための人件費はあるか? 「はい」「いいえ」
④(家族への保障)退職慰労金や弔慰金は準備されているか? 「はい」「いいえ」
⑤(その他)仮払金精算、事業承継、相続などの準備はなされているか? 「はい」「いいえ」

 また、将来訪れる勇退時に向けた生存退職慰労金など老後の資金準備はなされているか?
 このように項目毎に「はい」「いいえ」で直感的に回答していただくよう質問します。

(3)あるべき姿のイメージを共有する
 リスクは未来に向かう過程に存在しています。会社の将来やビジョンが不明瞭なままでは不安感を持つだけとなり、リスクも不明瞭となりがちですので人は行動を起こしません。社長が抱いているあるべき姿をお聴きし、イメージを共有できればその過程で存在するリスクと課題も認識しやすくなるでしょう。
 このためには会社について、なりたい未来となりたくない未来も少し考えてもらい、起きてほしくないこと※を確認して行きます。生命保険鑑定士は保障鑑定を専門領域にして、経営者がどのようなあるべき姿をイメージしているのかを丁寧に聴くことが重要です。
 ※(起きてほしくない例)死亡、障害、重度疾病、会社の業績低下、家族の困窮、老後の困窮、病気、介護、争続、

(4)純粋リスク対策は優先順位付けから始める
 リスクに対し漠然とした不安を抱くのではなく、リスクをマネジメント(管理)することで可能性の幅が広がることを伝えます。純粋リスクを課題として整理する意識を持つ事、経営者がこの気づきを得る機会を作ることが大切です。リスクマネジメントでは純粋リスク項目を重要性と緊急性でランク付けしてみます。そしてトップリスクとしていくつかに絞り込み、保険に転嫁しておくかべきか考えます。
 保障鑑定では、前述しました(2)の①~⑤の各項目について社長の考えや緊急度、重要度について丁寧に質問しながら、一緒に優先順位をつけて絞り込むプロセスが大切ですが、これが保障鑑定に対する納得感にもつながるでしょう。この結果企業経営努力により低減できるリスクと、死亡や健康など想定外の危機、将来必要な勇退後の資金準備、相続事業承継など、トップリスクを認識できますので、保障に転嫁しておく必要性への理解も深まることでしょう。
 つまり、保障鑑定はリスクを羅列するのではなく、年代、価値観、想いの強弱をもとに重要性と緊急性の順位をつけトップリスクを絞ることが肝要です。社長の漠然とした不安を抱いた現状から自身の課題を明確化します。トップリスクとして課題をいくつかに絞れば、その解決策を知りたくなります。これが生命保険鑑定の後半部分となりプランニングへの入り口となることでしょう。

理事長福嶋記

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